ENDRECHERIの最新曲、『LOVE VS. LOVE』はもう聴いただろうか?
世界が大きく姿を変えてしまった現在、あらゆる人々の間に起こる、争いや分断、価値観の違いによるいざこざは、本来、不必要なほどに蔓延してしまっている。その世界において人々は愛と愛を闘わすことなく、愛を与え合うべきだと歌う雄大な楽曲だ。
そう言った詩的な世界観には多分に触れられているが、この楽曲において特筆すべきは、そのサウンド面である。
そのサウンドを紐解く前に、この楽曲以前のENDRECHERIの作品として発表されている『GO TO FUNK』の話をしなくてはならない
2021年にリリースされたアルバム、『GO TO FUNK』は、その濃厚なファンクネス故に評価は海を渡り、FUNKのオリジネイターがひしめく地、アメリカのFUNK専門ラジオ局がピックアップし、プリンス、シルクソニックと並びベストアルバムにインするに至ったり、アメリカの有名TVプロデューサーがフェイバリットに上げるなど、広く世界に響き渡っている。
『GO TO FUNK』のサウンドは、ENDRECHERI/堂本剛氏とGakushi氏が、流行病禍の身動きが窮屈な中、がっぷり四つに組んで、互いの深く濃いファンクネスをぶつけ合うことで生まれた作品群だ。
コンテンポラリーなビート、コード感、そしてメロディを持った楽曲が溢れるこのアルバム。全編通して、往年のPファンクから受けついだアフロフューチャーなシンセサウンド、『愛scream』ではマイケル・ジャクソンやボビーブラウン的NEW JACK SWINGマナーにも通ずる洗練されたダンサブルな構成、
随所にマーク・ロンソン/ブルーノ・マーズの楽曲と並列して語ることができるホーンアレンジやコード進行、更には、『Lovey-Dovey』などからはディアンジェロからアンダーソン・パークまでに地続きな16を感じる粘着質なビートを感じることができる。
また、横ノリのグルーヴの多い中、『愛のない 愛もない いまが嫌い』、などでは'80sフレイヴァーなシンセドラムを、『Rain of Rainbow』はまさかのEDMテイストを打ち出し、その幅広さを見せている。
そしてENDRECHERIが奏でるギターは、FUNKのキモとも言える短音カッティングやフレーズのキメから、『勃』に特徴的なジミ・ヘンドリクスのようなワウを効かせたフレーズ、エディー・ヘイゼルも頭をよぎるフェイザートーンのクランチ気味なリフなど、本人の口からあまり語られることはないが、その影響やマナーを色濃く感じることができる音色がひしめき合っている。
アッパーチューンが続く中、要所要所に挟まれたバラードが、その真価を発揮する。『愛のひと』『202021』に代表されるような、優しいピアノー或いはシンセ-に導かれたその歌声が刺さるのは、彼の言葉の強さのみならず、その喉の使い方、倍音の鳴り、類い稀な音質としての突き抜け方と言った、"楽器"としての"声"の質の高さがあってこそでもある。
紡がれた言葉が容易く人々の心に響くこの歌声こそが、彼の20年を超えるヴォーカリストとしての歴史を際限なく伝えてくれる。
ようやく『LOVE VS. LOVE』の話をしよう。
今作は、ENDRECHERIの真価である、歌声を中心に据えたバラードとして始まる。リバースピアノが右往左往している中、そのまっすぐな歌声が立ち現れ、不安や葛藤を掻き分けるように声が突き進んでいく。
水滴の音が鳴り、視界が開けたその先で、待望のファンクネスが顔を出す。太いバスドラムと抜けのいいスネアが拍子を取れば、ホーンセクションの跳ねたリズムがステップを誘う。
太く畝るSOKUSAI氏のベースラインは、音の海を360度自由に動き回り、マサ小浜氏のディストーションギターと、ENDRECHERIのカッティングギターが交互に存在感を表し、その縦のリズムは、よりグルーヴに拍車をかける。
曲が進むに連れて、各々の音の存在感は複雑に絡み合い、始まりの穏やかさと、ラストコーラスでの重厚なリズムメイキングとの対比と融合こそが、 LOVE VS. LOVEという楽曲のメッセージでもある、反駁するそれぞれとの融合、理解のようにも感じる。
もう一度問おう、ENDRECHERIの最新曲、『LOVE VS. LOVE』はもう聴いただろうか?
具に、そして、静かに、そして、激しく、聴いただろうか?
あらゆる発見と共に、何度も、深く、聴いてみてほしい。
Mr.HitoriGOTO